大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26(あ)2134 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人白井源喜の上告趣意第一点について。

刑訴二二〇条によれば司法警察員は同法二一〇条の規定により被疑者を逮捕する

いわゆる緊急逮捕の場合においては逮捕の現場で差押又は捜索することができ、こ

の場合には令状を必要としないのである、ところで原審が引用した証人Aの証言及

び同人作成の捜索調書によると同人は被告人を緊急逮捕し、その現場において捜索

差押をしたのであつて、右の捜索差押はBに対して出されていた令状によつてなさ

れたものでないことが判るのである。尤も右捜索調書には「被疑者Cに対する物価

統制令並酒税法違反被疑事件につき」捜索したる旨冒頭に記載され、捜索(令)状

によらない場合として緊急逮捕と記入されているがなお捜索(令)状による場合と

して発付官奈良地方裁判所葛城支部裁判官三谷武司、発付日昭和二十四年二月十日、

令状を示された者Cと記入してあり、本件差押調書にも「差押(令)状による場合」

の欄に右と同一の記載があるから一見令状によつて捜索差押が行われたかの如くみ

えるが右各調書は被疑者Cの被疑事件に関するものであり令状の出されている被疑

者Bの被疑事件に関するものではないのであるからその捜索差押がBに対する令状

によつてなされる筈がないのであつて従つて右各調書の令状による旨の記載は調書

作成者の誤記と認められる。すなわち捜索調書に記載されている緊急逮捕の記載の

方が正当であるといわねばならない。然らば右各調書はこれを無効とすべき理由が

ないのであるから論旨の判例違反の主張は前提を欠くもので採用するを得ない。

同第二点について。

論旨は刑訴四〇五条所定の上告適法の理由にあたらない。また同法四一一条を適

用すべきものとは認められない。

- 1 -

同第三点について。

しかし第一審判決は被告人の自白のみによつて判示第三の事実を認定したもので

なく他に数多の補強証拠を挙げているのであるから論旨は理由がない。

よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

昭和二八年三月一三日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!